ウリアゲスイッチ,アタカの手の内を公開2

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71号 アタカの手の内を公開2

特集 アタカニュース

アタカの手の内を公開2

03

自分好みから離れる

 昭和の時代は多くの企業が経営者の好みで事業を彩っていました。景気はグングン上がり、消費者の強烈な消費志向は、どんなものでも、どんな売り方でも「売れてしまう」という勘違いする環境がありました。こういう状態をプロダクト・アウトと言います。広告会社やデザイナーは歯の浮くようなお世辞を並べて経営者の機嫌を取れば仕事が入る。そんな時代でした。
 バブルが崩壊し、売上が下がった経営者は当然のように広告を打ちました。しかし、売上は一向に戻りません。一時的な不景気が去れば、また昔のような好景気が来るからと「待ち」の態勢になりました。しかしいくら待っても景気は復活しません。しびれを切らして今度はお店を飾ってみました。日除け暖簾も新調し広告も打ちました。それでも売上は一向に上がりません。
 「何か違うぞ…」気づいた時にはもう遅く、昭和後期に600万あった事業所は、平成の終わりには350万まで減りました。まさに半減です。
 さて、事業は何のためにあるのでしょうか?経営者のためではありません。従業員のためでもありません。事業は消費者のためにあり、需要と共に栄え、需要が弱まれば売上は顕著に下がるのです。
 気が付きましたか?
 並べれば売れる時代ではありません。並べ方、売り方を考えなければ売れない時代なのです。昭和の好景気時代の作れば売れるプロダウト・アウトに対して、今の消費状態を「顧客の好きなものを好きな形で売る」つまり、マーケット・インと言います。
 事業は経営者が好みで作るものではありません。広告会社の担当者やデザイナーの個人的な好みも要りません。
 事業は、その事業が一番欲しいターゲットの平均的な嗜好で構築されて初めて利用されるのです。
 そうです。事業は私物ではありません。公私混同しているから売れなくなっているのです。
 頭の中を大きく変えなければなりません。経営者主義から顧客主義への入れ替えが必須なのです。
 さて、それではどうすれば顧客主義で考えられるのか?顧客主義とは客観的に第三者目線で見る必要があります。結果論でいえば、考えることが出来る人と出来ない人がいます。頭が硬い人は難しいです。ワンマン社長ではほぼ至らないです。どちらかといえば女性のほうが第三者目線を使えます。右脳・左脳でいえば右脳の要素が必要なのです。

自分の事業、だから解らない
 10数年前、ビジネスホテル経営者様からの相談をうけました。課題は売上の減少です。詳しく聞くとバブル崩壊以降、特に女性客が減少し、ほとんどが男性客になっているということでした。
 僕は経営者と玄関に出て、ホテル入口を眺めました。
「ここに女性客が嫌がるものがあるんです」
 そこにあるのは黒色の入口回り。そして、金色でホテルの名称が掲げられていました。
「黒に金色は暴力的・危ないという印象があるんです」
 どちらかと言えば「格好良い」と感じているようで、経営者には僕の言葉が腑に落ちないようなので、フロントにいる女性従業員を呼び寄せました。
「この看板はどんな印象?思っていることを言って」
 すると女性従業員は一言「怖いです」。
 自分が格好良いと思うことを他の人が同じではないことを知った経営者は愕然としていました。これが経営者主義の経営に起こる現実です。
 昭和の時代は日本人経営者の草刈り場だった宿泊業も、チェーン店や海外資本が入り乱れ、以前とは違う価値基準、違う手段に入れ替わっています。昔ながらの長所を生かし、お客様が煩わないように今流も入れて行く。そんな柔軟な姿勢が成長を誘うような気がします。
 DX化、新しい決済手段、新しい認知活動などなど、マーケットがガラリと変化しました。既に変わっているんです。変わりましょう。顧客主義へ。再び需要を興すために。

04

社長は中、お客は外

 売上アップを試みる順番を間違えている経営者が多いです。多くの経営者が商品パッケージとかラインナップとか、食堂なら店内を飾るとか「内側の事」を真っ先に考えています。が、それでは、お客様は「外から来る」という事実を無視しています。
 売上を数式に例えると「売上=客数×客単価」です。客数か客単価かの何れか、又は両方を増やせば売上が上がります。だから値上げしてくださいと訳のわからない事を言うコンサルタントも少なくありません。 客数と一言に言ってしまう「お客様」はどういうルートで買い物に至るのでしょうか?
①広告や口コミで広まる→そのうちの一部の人が認知する→更に認知した一部の人が興味を持つ。●広告は顧客にとって魅力的でなければならない。
②興味を持った人の一部がお店の前までくる→外観を見て気に入った一部の人だけが中に入る。●外観も顧客にとって魅力的でなければならない。
③中に入ったお客様は二つに分かれる。気に入る人と気に入らない人。気に入らない人は何も買わないで帰る。そしてリピートしない。気に入った人は何かを買おうとする。●事業内部も顧客にとって魅力的でなければならない。
④商品の紹介や値札を見て、価値を感じたら買うし、感じなければ買わない。●商品紹介も顧客にとって魅力的でなければならない。
⑤接客・会計(クロージング)が気に入らなければリピートしない。●人材も顧客にとって魅力的でなければならない。●クロージングも顧客にとって魅力的でなければならない。
⑥あらゆる魅力を作り出す「コンセプト(企画・戦略)とデザイン」が魅力的であれば①~⑤までの魅力が際立つ。経営者は事業の内部で考えるが、お客様は外からくる。つまり、そこで考えが180度違うことに気づかなければ何事も改善しません。
 改善のヒントは、主役は顧客であることと意識するところからスタートします。

B to Bに固執せず、B to B to Cを共有
 直接消費者を相手にしない事業間取引(BtoB)の場合は、顧客事業所の担当者の意見が強く影響します。そこに得意先主義(経営者主義のようなもの)があると事業本来の力とは別の要素が絡むのでとても厄介です。
 ある時、大企業の営業部会議に呼ばれ、販路開拓のアイディアを求められました。弊社のような小さな会社には稀な事です。
 意気込んで様々なアイディアを出しました。どれも、開拓先事業のその先の顧客(BtoBtoC)の喜ぶ顔を思い浮かべながら考えました。
 現場を知る営業部の方々は嬉々として実現に向けた前向きな質問を投げかけてくれましたが、末席にいたコンプライアンス担当者から「それは弊社のブランドに合わない」と言われました。
 事業が、顧客を喜ばせる事を提案できなければ、需要はなくなります。顧客は事業の生きる糧です。それを考えたらコンプライアンスも糞も無いはずです。事業間取引(企業へのサービス)は、DXサービスを除いて旧型の職種事業はどんどん少なくなっています。
 受注・発送業など、DXが取って代われる作業はどんどん移行しているからです。公式に当てはめてこなすだけの事業も今後はDXに取られていきます。
 日本人は、既にあるものを進化させるのは得意なのですが、0から有を生む事は苦手なようです。が子供たちは得意です。
 世界も0から沢山の物を生み出して、この20年で日本の2倍にも及ぶ経済価値を膨らませてきました。
 公式さえ覚えれば出来ること。試験にさえ合格すれば出来ること。記憶力が良くても創造力はありません。
 日本が世界に劣っている事が創造力であり、低迷する今の日本経済を打破し進化に向かわせるのも創造力です。

さぁ、想い描きましょう
 あなたの事業を富ませる顧客とはどんな人ですか?年齢、性別、服装、どんなバックを持ってますか?どんな車に乗ってますか?どんな暮らしをしていますか?その人が事業に触れる道、その順番を知って、その目線で今の事業を見なおすと、どんなアイディアが浮かんでくるでしょうか?
 あなたの事業を知らないその人に見せる最初の広告はどんなデザインが良いですか?
 事業外観がどうあれば気に入ってもらえますか?内部はどう作れば買う気になってくれますか?
 もう一度想像してください。あなたの事業が多くのターゲットに利用されている姿を。その時の風景を具現化してください。事業はきっと好転します。

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